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「描いて書く!四コマ作文」の開発ストーリー

「どうして文章を書くのが嫌いな子ども、苦手な子どもが多いのだろう?」

こういう疑問から、文章を書くテキストの制作が始まりました。

当時、ある大学の特別客員研究員として、日本の民話や神話、つまり昔話を研究していた私は、昔話に単なる絵本に掲載されている童話としての存在だけでなく、学習素材としての可能性を感じていました。

その可能性を確認するために、まず「物語の素材」というテキストを制作しました。このテキストは、日本の代表的な昔話、例えば浦島太郎や竹取物語、一寸法師などを小学生向け書き直したテキストです。こういう代表的な昔話は、人から人へと口伝えに伝わってきただけあって、物語としての質も高く構成もしっかりしています。物語の構成を学ぶには最適な学習の素材と私は思いました。

昔話は物語の構成を学ぶには最高の教材

また、実際に指導現場で使ってみて、目を輝かせて読む子どもたちを目の当たりにしたのでした。もっと小さい頃、保護者の方に読み聞かせてもらったお話としても、「やはり、昔から伝わってきたものには、役立つ力があるんだなぁ」と実感したのでした。

「読むのは好きだと思うけど、書くのはどうなんだろう?」

しかし、いきなり昔話を書きなさいという課題を与えても、なかなか書けるわけがありません。物語の構成は、なんとなくわかっていても、読むのと書くのは別問題です。いきなり、小学生(特に小学校低学年)が書くのはハードルが高すぎるのです。

「小学生って読む以外に何が好きなのかな?」この疑問を解決するため、心の中で思い浮かべたのは、幼稚園の遊びの風景でした。そう、園児たちが、クレヨンを不器用に持って、白い画用紙に絵を描きまくっている風景です。園児たちは、もう無我夢中です。自分たちでキャラを作り、自分たちワールドを生みだしているのです。つまり、子どもたちは、想像して描くことが大好きなのです。

子供は絵を描くのが大好きです!

では、この大好きな描くことと、嫌いな子どもが多いという書くことを、どう結び付けたらいいのかという問題が立ちはだかりました。描くことと書くこと、全く違うような気がしたのです。しかし、その問題はすぐ解決できました。

それは、壁画と象形文字の存在です。

壁画といえば、歴史の教科書に載っていたラスコーの洞窟壁画が有名です。現在のフランスに現存する先史時代の洞窟に描かれた壁画で、動物(牛や馬、鹿など)が見事に描かれています。文字は描かれていませんが、文字に繋がる絵なのです。その文字に繋がる絵から生まれたのが、ものの形をかたどって描かれた文字、すなわち象形文字です。古代エジプトのヒエログリフや漢字の象形文字は有名です。特に、小学校低学年で習う象形文字は多く、「山」や「川」、「火」や「田」など、文字からも絵が想像できます。

象形文字は子供たちの想像力をたくさん刺激します

このようにして、理論的には「絵を描くこと」と「文字を書くこと」が繋がりました。では、実際に学習素材として制作するにはどのようなカタチにすればいいのだろうということで、思い浮かんだのが、四コマ漫画です。四コマ漫画とは、構成がしっかりとした四構成です。そのしっかりとした構成から、文字の物語と相性がいいと思いました。

最初は、四コマ漫画を文字化するテキストを考えていたのですが、それでは創り出す楽しみがなくなります。実際、子どもたちに試験的に四コマ漫画作文をやってもらって感想を聞くと、あまり面白くないという感想が多数となりました。それもそのはずです。物語の流れが決まっていて、ただ絵を文字にするだけだからです。

そこで、こう考えました。四コマ目(物語の結部分・むすび)を自由に描いて、その内容を書いてもらうのはどうだろうか。そこで、試験的にそういうテキストを制作しました。絵は私自身の手描きです。ちなみに、どうして棒人間にしたのかということですが、これは壁画に登場する人物が、棒人間が多いということ、そして誰でも(子どもたちでも)簡単に書けるという理由からです。ちなみに、絵の下手な私でも、簡単に描けました(笑)。

そして初めて誕生したのが、このテキスト(写真)です。

四コマ作文のテキストは完全オリジナル!

物語には、起承転結という有名な構成があります。起承転結は、まさに四構成で、四コマにぴったりなのです。そこで、三コマ目までの物語を書き、それに合わせて絵(イラスト)を用意しました。つまり、四コマ目は、絵を描いて、文字を書くわけです。

絵(イラスト)が、あまりにも拙かったので、プロのイラストレータを公募し、描いて頂くこととなりました。そして、完成したのが、このテキスト(写真)です。テキストのレベルも格段にアップしました。

格段にレベルアップしたのは、イラストだけではありません。テキストには、原稿用紙チェック・評価欄があるのですが、それらも見やすく、使いやすくバージョンアップしました。原稿用紙は、15×16の240字で、書くことにストレスを感じない一番書きやすい字数にしました。また、文章が書けたら自己チェックできる項目、そして文章の評価欄も掲載しました。文章の評価は、A評価2種類とB評価二種類の四段階評価です。

原稿用紙と評価項目、見やすくわかりやすい構成です!

C評価というのがないのが評価の特徴です。誰でも頑張って書いたのに、C評価なんて嫌だと思うからです。

 このテキストは、まだまだ進化していきます。より使いやすく、より成果が出やすく、そして、より愛されるように・・・。

四コマ作文は今後も進化を続けていきます。